おばけうさぎの断片的なこと、あれこれ

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【ややネタバレ注意】純粋な成長物語の終【終物語】

人気ライトノベルシリーズ<物語>シリーズ・最終巻(になる予定だった)、『終物語』(下巻)を読み終えました。

 

終物語 (下) (講談社BOX)

終物語 (下) (講談社BOX)

 

 

一番最初の『化物語』刊行が2006年、それからアニメ化され、時系列がバラバラな続編があり、「いつ終わるのか……」と思ったら、どんどん畳み込まれていった。

作者はその間にも他のシリーズも書いていたり漫画原作も手がけたり、「シェイクスピアは7人いた!」じゃないけど「西尾維新も7人くらいいるんじゃないか」と思うくらい。

 

化物語』『偽物語』『傷物語』『猫物語黒』までは、主人公・阿良々木暦の冒険譚であり、ハーレム形成物語でもある。(ファーストシーズンと呼ばれる)

その後「セカンドシーズン」と呼ばれ、昨年アニメ化もされた『猫物語白』、『傾物語』、『花物語』、『囮物語』、『鬼物語』、『恋物語』では、タイトルと主人公が微妙にずれ、時系列もくずれ、物語同士が互いに補完していく。語り部が阿良々木暦からそれぞれのヒロインと代わり、そして阿良々木暦のハーレムはどんどん崩され、暴かれる。

 

本当に、お前のやったことは「正しい」ことだったのか?

 

そして、『憑物語』ではまさかのファイナルシーズンたくさん本出ちゃうよ宣言があり、ついにファイナルシーズンに入った。

暦物語』、『終物語』上中下(これは最初1巻という案内だった)、今一応最後と言われている『続・終物語』。

 

『続・終物語』が出ないことには本当に終わった、完結しますと全然言えないのだが、最初『終物語』で完結すると言われていたので、注目して読んでいた。

 

なにせ途中の『花物語』で主人公・阿良々木暦は大学生になっている……のに、途中で殺害宣言が出るわ実際死にかけるわで、「あ、これは終わらない、きっと『花物語』の設定はなかったことにされる、されても仕方ない」と思っていた。

 

それが、この下巻で――――まだ残された謎はあるにせよ―――阿良々木暦の物語は「終わった」。

 

カタがついた。

 

「青春に、おかしなことは"つきもの"だ!」といった『化物語』、

「青春を、すべて見るまで終われない。」と言われたセカンドシーズン、

そして、「青春の、終わりを告げる影がさす。」のファイナルシーズン。

 

なぜここまでしつこく「青春」と強調しているのだろう?と思う。

 

そもそも吸血鬼化する主人公、怪異と呼ばれる現象に取り憑かれるヒロインたち、まったくもって「青春」という言葉から遠いところにある。

 

それでも、やっぱり彼らはちゃんと「青春」していたのだった。

学校に行き、テストを受け、成績に悩む。友人関係に悩み、親との関係がうまくいかず、恋に落ちる。

 

そして、生まれて初めて、「自分」と向き合う。

 

普通の物語では「高校1年」という始まりの年や、「高校2年」というモラトリアムな年が中心に置かれるが、彼らは「高校3年」、はじめから「卒業」「進学or就職」を意識しなければならない、締め切りの年にいる。

 

最初から、「終」が置かれた物語。

 

いろいろな装置があったけれど、ちゃんと最初から「終わり」があったのだ。

 

「人間強度が弱くなる」と言っていた男の子の、成長物語。

 

まさかこんな、直球の物語とは思っていなかった。

 

今のところ、最後の<物語>と言われている、『続・終物語』がどんな物語なのか、想像ができないけれど、(……こっちも「やっぱり上下巻にしたわテヘペロ」と言われても驚かないくらいに調教されている)

 

まずは今回『終物語』、ちゃんと「終わって」よかったです。

 

さて、もう一度『終物語』中巻から読みなおそう……

 

……神原駿河並に本で埋もれた部屋から、探すことから始めなくちゃ。