飛行機と肉体
告別式を終えたばかりで、なんでも死について結びつけたがる感傷的な気持ちのたわごとだと思って書いている。
私が実家に帰るときに乗った飛行機は、雨の中を飛んだ。そのため、雲の中を通るとき、激しく揺れた。飛行機には大学入学以来、毎年乗っているが、その中でもトップクラスに入る。
横揺れ、縦揺れ、ジェットコースターに乗ってたっけ?と思うくらい、重力を感じる揺れ。ジェットコースターにはレーンがあるが、離陸した飛行機は当然助からないレベルの高さにいる。
「葬式で帰るのに大丈夫かこれ」
と思った。
緊迫した空気のなか、ようやく雲の上に出た。
眩しかった。
通り抜けた雲はとても綺麗だった。
その雲を見ていたら
「あ、人の一生ってこんななのかも」と思った。
気流にもまれ、激しい揺れの中で産まれるけれど、生きてる間はこんな光みたいなところにいて、また揺れながら戻っていく。
再び飛び立つ、と思う人も、
いや、1回だけ、と思う人もいるだろうけれど。
着いて早々向かった部屋には、祖母がいた。
ぎょっとした。
ぎょっとしてしまった自分を恥ずかしく思ったけど、やっぱりぎょっとした。
肉体だったはずなのに、もうものになっている。
顔を見たら、本当に寝てるだけのような気がするけど、動かない。
どきどきしながら少しだけおでこに触ってみた。頬を触ってみたかったけど、その弾力のなさを知ることが怖くて、おでこにした。
なんともいえないひやりとしたものだった。
結局その後は棺の中に入れられて、もう触ることはできなかったから、この時触れておいてよかったと思う。
今日、棺に花を入れながら、とても不思議な気持ちになった。
「あんたの指はわたしとそっくり。顔の形もよく似てる。」
と言っていて、実際瓜二つだった様々なパーツ。
もうなくなってしまうものが、私の中にはあると思うと、とても不思議な気がした。
これからはこういうことも増えるんだ、と思うと、複雑な気分だ。